
ガレージで磨いた、はにかむ天才
TOEDA
「信州食材×正統派フレンチの技法で、ペアリング込み33,000円のコースを3テーブル限定で提供する、戸枝シェフの探求心が皿に宿る軽井沢の一軒。」
樋口 理
ライターくいしんぼ
軽井沢に来るたびに、ここへの予約が入っているとわかると、少しだけ気持ちが緩む。そういう店が、そう何軒もあるわけではない。
3テーブルが生む、密度
完全予約制、3テーブルのみ。この制約が料理の精度を支えている構造は、入店した瞬間から伝わってきます。厨房を切り盛りする戸枝忠孝シェフが、自らお皿をサーブしにくる。その際のプレゼンが独特で、はにかみながら、でも目が輝いているという、少しギークなエンジニアが自作のプロダクトを見せるときの顔に似ています。気難しさとは対極にある人で、美しく美味しいものを「開発」すること自体が楽しくて仕方ないのだと、料理を前にすると確信します。

信州の食材を「解体」して再構築する
コースは信州の季節食材を正統派フレンチの技法で仕上げる構成。シグネチャーディッシュとして知られる「信州サーモン、野沢菜、有明海苔のテリーヌ」は、その方向性を端的に示す一皿です。テリーヌという古典的なフォーマットに、地域性のある食材を重ね、断面が絵画になる。見た目の設計と味の設計が別々ではなく、同じ論理で動いている。

ボキューズ・ドール参戦のときは、1ヶ月、店を休んで、ガレージに本番と同じサイズのキッチンを作って籠もって特訓したというエピソードを知ると、この料理の完成度が「才能」ではなく「反復と検証」に裏打ちされているとわかります。凝り性、という言葉では少し足りない。


33,000円という数字の意味
以前はランチもディナーも15,000円のコースでしたが、ディナーは現在、ドリンクのペアリングまで含めた完全フィックスのコース33,000円に移行しています。価格が倍以上になったことよりも、その内容で33,000円という設定に驚く。ソムリエであるマダムが各皿に合わせて設計したペアリングも込みであることを考えると、この値付けはかなり抑制的です。

食後に次回の予約をお願いして帰る、というのが、うちの習慣。
店舗情報
TOEDA
長野県軽井沢町日本、〒389-0111 長野県北佐久郡軽井沢町長倉1877−1
