
小林シェフの幸せになる魔法
フォリオリーナ・デッラ・ポルタ・フォルトゥーナ@嶺
「軽井沢で1日1組限定を貫くシェフが東京に進出、9月にはカウンター店舗を開く。」
高宮慎一
ライター"フォリオリーナ・デッラ・ポルタ・フォルトゥーナ"その呪文のように長い店名は、「幸せを司る小さな葉」という意味を持つ。小林幸司シェフとともに厨房に立つ奥様葉子さんの名を冠した店名だ。その由来を知ってから席に着くと、一皿一皿の受け取り方が少し変わる。 さらに、解読が必要な魔法書のような手書きのメニューに、さらに儀式のように一皿一皿に小林シェフ自らの丁寧な説明が加えられる。すると、一口口に運ぶ度に、魔法が発動する。

軽井沢の伝説が、東京の夜に降りる
軽井沢で週末1日1組限定で最高の体験を届ける店が、嶺でポップアップとして日付限定で扉を開いた。「伝説の」という形容はいくらか使い古されているが、ここでは違う意味で機能する。1日1組しか料理を出さない店が、別の場所で特定の日だけ現れる。それ自体が既にひとつの出来事だ。
お店に足を踏み入れると、空気が締まっている感覚があった。調理の気配と、香りの気配が重なっている。厨房側から漂ってくるものが、すでに料理の一部として機能していた。香りがここまで前に出てくる空間は、そう多くない。
意外な素材が、一体となって着地する
料理が運ばれるたびに、「なぜこの組み合わせなのか」と思う瞬間があった。一見して喧嘩しそうな素材が並んでいる。火入れの仕方も一筋縄ではいかない。複数の要素が複雑に絡み合い、互いを押し合いながらも、口に入れた瞬間に統体となる。バラバラに見えたものが、一体感をもって着地する。

これは偶然ではない。意外な食材、意外な組み合わせを選びながら、最終的には直球ド真ん中のストレートとして手元に届く。変化球で来ると思って構えていると、真ん中に決められる。そういう料理だ。全ての皿に「やられた」と感じさせられる。

どの料理も香りが際立った。表現として「香りが立つ」と書くことは多いが、ここでは文字どおりのことが起きていた。皿が近づいた瞬間に、食欲より先に何かが動く。「香りが美味しい」と感じさせられる。

9月、小林劇場が東京に常設される
軽井沢まで足を運ばなければ食べられなかったものが、東京で食べられる。それだけでも事件だ。さらに、9月には東京にカウンターのみの店舗を構えるという。
カウンターという形態は、小林シェフにベストマッチしている。劇場として成立する距離感がある。料理が目の前で組み立てられ、皿が置かれ、香りが立ち上がる。その一連が間近で起きる。

「小林劇場」にはぜひ訪れたいものだ。
店舗情報
フォリオリーナ・デッラ・ポルタ・フォルトゥーナ@嶺
東京都港区三田1丁目4-60 三田ガーデンヒルズ パークマンション棟 6F
