同業グルメ
自らのDNAに刻まれた一杯

自らのDNAに刻まれた一杯

ラーメン一番

ラーメン
東京都練馬区

料亭出身の先代が研究を重ねた王道の東京醤油ラーメンを2代目が守り続ける、環七の老舗繁盛店

コンセプト商品ホスピタリティ空間価格
忘れられない
最後の晩餐に

中村仁

飲食業界

株式会社グレイス

西麻布 豚組オーナー

中村仁

40年近く通い続けるという年月に、自分でも少し驚く。大学生のとき、先輩に連れられてはじめて暖簾をくぐった。その頃は正直、そこまで刺さったわけではなかった。うまいとは思ったが、通い続けるほどの理由がまだ見えていなかった。それが今では、1か月から1か月半に一度は必ず食べていないと、どこかが狂う感じがする。結婚して、子どもができて、その息子のラーメンデビューもこの店だった。もはやラーメンという食べ物の話ではなく、自分の人生の地層の一部になってしまっている。板橋の小茂根、環七沿いにある「ラーメン一番」の話だ。

建物が古くなっても、行列だけは変わらない

僕が知っている限りでも、この店はもう40年以上営業している。建物はボロボロで、台風の夜は本気で心配になる。それでも毎晩、店の前に行列ができる。そのことがすべてを語っている。長々と説明するより、この一事実だけで十分だと思っている。

今の店主は2代目で、先代の息子さんが後を継いでいる。料亭で修業した先代が独立し、研究を重ねに重ねて作り上げた東京ラーメン。その仕事を息子さんがきちんと引き継いで、繁盛店として続けている。継ぐということの難しさを、飲食に関わる身として少しはわかっているつもりだが、この店を見ていると、継ぐだけでなく守り抜いているという言葉の方が近い気がする。

派手さがないのに、やめられない

スープは豚骨と鶏ガラと野菜を合わせ、背脂が浮く。ただ、脂っこいとはまったく違う。食べ終わった後の感覚が軽い。それでいて奥行きがある。喉を過ぎてからも、スープが胃の中でじわじわと存在感を持ち続けるような感じがある。味は醤油・味噌・塩から選べて、オロチョンという辛味を加えるとスープにさらにコクが出る。辛さで誤魔化すのではなく、コクが乗る。この差は食べてみないとわからないが、二郎や家系のようなわかりやすい個性とは対極にある仕事だ。

ラーメン一番のラーメン

麺はストレート。普通のラーメンの1.5玉分が入っていると聞いたことがある。実際にどんぶりを前にすると、その存在感は確かにある。年を取って食べる量が減った今でも、この店の麺はきちんと食べ切れる。胃にのしかかってくる感じがない。これは脂の質とスープの設計の話であって、量を抑えているからではないと思う。

唯一無二という言葉が、ここでは過剰ではない

二郎があり、家系があり、博多があり、札幌がある。ラーメンはすでに流派の時代で、個性を強調することが生き残りの条件のようになっている。この店はそのどこにも属さない。強烈な個性があるわけではない。食べた瞬間に「これだ」と膝を打つ派手さもない。なのに、一度その味を知ってしまうと離れられない。とんかつ屋をやっている自分には、正直に言えばラーメンのスープの技術を体系的に語る言葉がない。でも、通い続けるという事実だけは偽りようがない。

40年間、一度も飽きたことがない。それは「美味しい」という評価とは少し違うところにある話だ。自分の中で、このスープの味が基準になってしまっているから、他のものと比べるという感覚がそもそも起きない。環七沿いに、古き良き東京ラーメンが今この時代でも変わらず食べられる。そのことを、幸運だと思っている。

店舗情報

ラーメン一番

ラーメン

東京都練馬区日本、〒176-0004 東京都練馬区小竹町2丁目74−8

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