
山と焚き火を手懐ける豪快さと裏腹な繊細かつ緻密に構成されたスパニッシュ
MANO
「シェフ自ら山で採取した山菜・きのこ・ジビエを、全てカウンター前の暖炉で薪火調理する薪火スパニッシュ」
高宮慎一
ライター軽井沢に、静かにとんでもない店が生まれていた。
オープンから2年も経たないうちに、「The Japan Times Destination Restaurants List」、「TERIYAKI BEST RESTAURANT 2025 SILVER」、「食べログ スペイン料理100名店 2026」にも選出され、料理王国の表紙をはじめ多くの雑誌に取り上げられる、焚火スパニッシュの気鋭。
スペイン語で「手」を意味する「Mano」。軽井沢の山懐に構えるその店は、今、急速に名前を広めている。
薪が全てのスタート地点にある
カウンターは8席だけだ。その正面に暖炉がある。西本シェフは、全ての料理を、自らの手で、焚き火で完成させる。
火入れに使うのは薪だけだ。ガスコンロはない。鉄板もない。炎の勢い、薪の量、距離の取り方で、すべての温度をコントロールする。全ての料理は薫香を纏う。バターですら、薪の香りがスパイスとなっている。シェフの豪快な外見からは想像できない、繊細な対話が薪と地元の山・野の素材と交わされている。

西本シェフが山で採取した素材を、場合によっては1年越しで仕込んだノンアルコールペアリングは、薪に負けない力強さと、薪と見事なマリアージュを体現する。

山に入ることが、仕込みになる
西本シェフは自ら山に入る。山菜を摘み、きのこを採り、ジビエを獲る。それが仕入れではなく、仕込みの始まりだ。素材の状態を川上から把握しているから、調理の判断が早い。迷いが少ない。

長野の地野菜、淡水魚も使う。スペイン料理のフレームを借りながら、素材は徹底的に地場に根ざしている。外来の料理技法と、土地固有の食材が、暖炉の前で一致する。それが「Mano」という料理の正体だ。

シェフは料理を出す際、素材の話をする。どこで採れたか。どういう状態だったか。なぜその調理法を選んだか。カウンター越しの説明は解説ではなく、料理の続きだ。食べる側はその言葉をストーリーとして受け取る。

予約が取れなくなる前に
8席というのは、意図的な選択だと感じる。この密度を保つためだろう。シェフが全員の料理を直接仕上げ、全員に話しかけ、全員の食べるペースを把握する。それができるのが8席という数だ。
カウンターから、薪火と素材、言葉が体験としてつながっていくのを感じられる。
予約はすでに困難となっている。本当に取れなくなる前に、一度体験してほしい。
店舗情報
MANO
長野県軽井沢町日本、〒389-0113 長野県北佐久郡軽井沢町発地553−3
