
大将の「おかえり」がうれしい、変わらない名店
ひょうたん
「糸島の自家畑野菜と玄界灘の魚を軸に、40年以上受け継がれてきた定番居酒屋メニューが揃う福岡・薬院の老舗。」
薬院大通の交差点に店を構えて、40年以上になる。私が大学生だった1983年頃にはじめて暖簾をくぐったから、この計算はほぼ正確だ。東京に移ってからも、福岡に来るたびに必ず寄っている。カウンター越しに「おかえりなさい」と声をかけてもらえる店が、地元以外にあるというのは、考えてみると相当なことである。

付け出しのキュウリで、すでに差がついている
「麦めし屋」の看板通り、麦めしとろろは確かに旨い。ただ、この店の本領は、定番の居酒屋メニューが一皿も手を抜いていないところにある。たとえば付け出しで出てくる小鉢の何の変哲もないキュウリとかナス。口に入れた瞬間に素材の密度が違うとわかる。糸島・瑞梅寺の畑で大将自ら作った野菜を、開店当初から使い続けてきた結果がここに出ている。

刺身はその日の盛り合わせを任せる。玄界灘の魚は、白身もシマアジも寝かせない。歯応えがあるぐらいがこの辺の流儀で、それが正解だと毎回思う。

鰯の生姜煮がある日は運がいい。焼き魚も煮魚も「その日あるもの」を出してもらう。へたに選ぶ手間をかけるのはムダ。


鶏手羽中の唐揚げ、スペアリブ、角煮といったど定番の肉料理も外せない。



そして卵焼きを頼み忘れていたら、向こうから勝手に出てきた。

味を受け継ぐということ
先代の大将は一昨年に亡くなられた。古民家風の内装は開店当初から変わらず、食器もすべて先代の手作りのまま使い続けている。カウンターの中を長年仕切ってきた「きいたん」が、その味をしっかり引き継いでいる。何かが変わったとは感じない。それがどれだけ難しいことか、と思う。
お酒は、ビール、比翼鶴をはじめとした福岡周辺の日本酒、九州各地の焼酎が揃う。衒いがない。素材も、酒も、器も、内装も、全部そうだ。何も証明しようとしていない店が、40年以上にわたって「勝てる気がしない」と思わせ続けている。

今日も、ごちそうさまです。
店舗情報
ひょうたん
福岡県福岡市日本、〒810-0022 福岡県福岡市中央区薬院1丁目10−5
