
焼き切るという正解
ぬた屋
「食べログ低評価ながら予約困難、強火で焼き切る独自スタイルの鰻が衝撃を与える熊本の隠れた一軒。」
光山英明
飲食業界株式会社個人商店
肉山 / オーナー
熊本「ぬた屋」の鰻に、焼き切るとはこういうことかと知った
熊本に友人がわざわざ連れていってくれる鰻屋がある。「ぬた屋」。名前すら知らなかった。それが最初の正直な状態でした。
焼き切る、という仕事
火を入れ切った鰻を食べたのは、あの日が初めてでした。
焼肉の仕事をしていると、火入れの強弱には人一倍うるさくなります。「焼き切る」という言葉自体は知っていた。でもそれが鰻でどう現れるかは知らなかった。

ぬた屋の鰻は、皮面がしっかりと炭の熱を受けていました。表面に力がある。噛んだ瞬間に抵抗がある。そして中から脂が出てくる。あの順番と強度を、箸を持ったまましばらく整理できませんでした。

蒸しを入れてふわりと仕上げる関東の流儀とは、根本的に別の思想で作られている。皮を焼き切ることで生まれる香ばしさと、脂の甘さが一皿の中に同居している。焼肉で言えば、強火で一気に焦がしたハラミの表面に似た快感がありました。

点数の低さが、むしろ信頼の根拠になる
食べログの点数が低い。見れば驚く数字でした。
それでも予約は取れない。
この二つの事実が並んでいること自体が、この店の本質を示しています。点数は記録されるが、あの焼きの感触は記録できない。記録できないものが、人を動かし続けている。
私がこれを書くのも、あの火入れが頭から離れないからです。知っている人が予約を埋め続け、知らない人が点数だけ見て素通りする。その状態が続いているのが、ある種の正直な状態だとも思います。
焼肉屋が鰻で教わったこと
焼く仕事をしている人間には、一度食べてほしい店です。
食材も業態も違う。でも「火をどこまで入れるか」という問いへの答えが、ぬた屋にはある。焼き切ることで何が生まれるか。素材の脂をどう引き出すか。あの鰻は、その問いに対する一つの回答として機能しています。
また行きます。友人に感謝しています。
店舗情報
ぬた屋
熊本県熊本市日本、〒860-0807 熊本県熊本市中央区下通1丁目11−27 佃ビル
