
引き算の先にある嫉妬
つばめぐみ
「フレンチ仕込みの技術で作るグリーンカレーが1000円で味わえる、思い出横丁の間借り店。」
思い出横丁の路地の奥、煙と喧騒に包まれた一角に、こんな場所があったのかとしばらく立ちすくんだ。西新宿の思い出横丁で2025年12月に間借りをはじめた「つばめぐみ」。グリーンカレーのめぇさんと呼べばピンとくる人もいるだろう。かつて銀座での間借り時代から、知る者にとってはずっと「あの人のカレーはなんなんだ」という存在だった人物が、今度は横丁の煙の中に現れた。
酒場の中に埋め込まれた精度
つばめぐみのメニューは、グリーンカレーだけではない。酒のつまみを数品、そしてフレンチで腕を磨いたシェフならではの仕事が随所に顔を出す。レバーペーストが出てきたとき、スプーンで一口なめてから皿を引き寄せた。レバーの臭みを丁寧に処理し、脂と塩のバランスが狂っていない。このひと皿で厨房の練度がだいたいわかる。レバーペーストがうまい店は、細部への目配りが生きているとわかるから、やはり信用できる。

タルトフランベが来たとき、見た目の引き算に少し驚いた。薄く伸ばした生地の上に、余分なものが何も乗っていない。それでいて口に入れると、必要なものが過不足なく揃っているという確信が来る。足すことより引くことの方が難しいのは料理の世界では自明だが、実際にそれを皿の上でやり切っている場面に出会う機会は少ない。フレンチで培った感覚が、酒場という場所に降りてきたとき、こういう形をとるのかと箸を止めて生地の断面を見た。

辛さとまろやかさが、同時にそこにいる
名物であるグリーンカレーは、ぜひオムレツトッピングで食べてほしい。これを強く言いたい。辛さとまろやかさが同時に存在しているという表現が、食べると意味をもって腑に落ちる。通常この二つは時間差で来る。辛みが走ってから、脂や甘みが追いかけてくる。しかしめぇさんのグリーンカレーは、その二つが分離せずひとかたまりで口の中に広がる。オムレツがそこに加わることで、滑らかさと熱が一体になり、スプーンを置くタイミングを完全に失う。
