同業グルメ
見た目はカラフル!だけどお味は引き算、絶妙な計算の上に成り立つ美学

見た目はカラフル!だけどお味は引き算、絶妙な計算の上に成り立つ美学

スパイスセブン

カレー・インド料理
静岡県三島市

イタリアン出身シェフが地元のシーフードを活かしたカレーを作る、三島広小路駅前の小さな一軒。

コンセプト商品ホスピタリティ空間価格
間違いない

有澤まりこ

飲食業界

株式会社サンラサー

東新宿サンラサーオーナーシェフ

有澤まりこ

三島広小路の駅前に、こういう店があるとは思っていなかった。外から見るとこぢんまりとした間口で、看板の主張も控えめだ。だがひとたび中に入ってカレーを口に含めば、この店が何者であるかはすぐにわかる。

料理人の来歴が皿に出る

オーナーシェフの日下部さんはイタリアン出身だという。その経歴はメニューを見るより、皿を見たほうが早く伝わってくる。カレーの盛り付けが、いわゆるインド料理屋とは明らかに違う。素材の置き方、ソースの引き方、余白の使い方に、洋食の厨房で時間を積み上げてきた人間の手癖が出ている。うちの店でもカレーの盛り付けにはそれなりに気を遣っているつもりだが、この繊細さは正直かなわないと思った。

そしてここが三島沼津であることを、料理がきちんと活かしている。シーフードを使ったカレーが得意だと聞いていたが、実際に食べてみると、魚介の扱いにイタリアンの感覚が滑り込んでいるのがわかる。火入れが過剰にならず、素材の質をスパイスが殺さない。港に近い土地の恵みをカレーという形式で出すことに、明確な必然性がある。

シグニチャーと言われるバイマックルーポークキーマにはエビが入っている。バイマックルーはこぶみかんの葉で、タイ料理でよく使われる香り素材だ。ポークのコクとエビの甘みを、この葉の柑橘系の清涼感がまとめ上げる構造で、スパイスの配合も暴れず、着地点が明確だった。

食べ終わった後にわかる設計

食べ始めた瞬間に「うまい」と叫びたくなる派手な味ではない。だがそれでいい。食べ進めるほどに満足が積み上がって、最後の一口を食べ終えたときに、ちょうどよい充足感が完成している。過不足がない、という言葉がこの店の料理には自然と浮かぶ。

これは実は難しいことで、インパクトで勝負するカレーは多いが、その構造でリピーターを作るのはしんどい。毎日食べたいと思える味の設計は、むしろ地味な技術の積み重ねで成立する。昼に地元の主婦層が多く集まるという話を聞いて、腑に落ちた。派手な刺激より、食べるたびに確かだと感じる味の方が、地域に根付く。

最近はビリヤニも出しているそうで、これは次回の楽しみにとっておいた。ビリヤニをカレー屋のメニューに加えるには、米の炊き方と火加減の管理に相応の習熟が要る。イタリアン出身のシェフがどういうアプローチでそれをやるのか、純粋に気になる。

手作りのデザートが閉めてくれる

食事の後、デザートも手作りだという話を店の方から聞いて、バスクチーズケーキを注文した。カレーとチーズケーキというのは一見距離があるようだが、スパイスを使った食事の後に、乳製品の丸みで口をリセットするのは理にかなっている。焦がした表面と滑らかな中身の落差がしっかりあって、甘さに頼り切っていない。これもイタリアンの仕事場で磨かれた感覚だろうと思った。

夜はコースを組んで宴会にも対応しているという。コース仕立てのカレー料理というのは、品数と順番の設計が問われる。それができるということは、日下部シェフがカレーをインド料理の文脈だけで捉えていないということでもある。

三島に来ることがあれば、広小路の駅を降りてすぐのこの店に入ってみてほしい。自分が何年もカレーを作ってきた人間であっても、いや、そうだからこそ、この店の皿には一考させられるものがあった。

店舗情報

スパイスセブン

カレー・インド料理

静岡県三島市日本、〒411-0856 静岡県三島市広小路町1−37 臼井ビル 2F

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