同業グルメ

とんかつはヒレ派と塩派です。

豚組食堂

とんかつ
東京都港区

とんかつ屋で言わないと塩が出てこない店はいやです。ここはまず塩で食べてと言ってくれます。

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2026年5月7日訪問

いしたにまさき

いしたにまさき

六本木という土地は、飲食店の新陳代謝が激しい。それでも長く支持されている店には、たいていちゃんとした理由がある。豚組食堂も、そのうちの一軒です。

ヒレ肉と塩だけが語るもの

注文したのはヒレかつ、塩で食べました。

ソースをかけずに食べるとんかつは、素材と火入れがそのまま出る。誤魔化しがきかない食べ方です。

ヒレ肉の断面は、淡いピンク色でした。中心まで均一に火が通っていて、それでいてパサついていない。ヒレはロースに比べて脂が少ない分、加熱しすぎると一気に水分が抜けてしまう。その手前で揚げを止めているのが、口に入れた瞬間にわかりました。噛むと繊維が素直にほどける。力を入れずに切れる、あの状態です。

塩は、肉の甘みを引き立てる方向に働いていました。塩気を感じるというより、肉の味が前に出てくる。衣は薄め、揚げ色は均一な狐色です。衣と肉の間に余分な空洞がなく密着している。下処理の段階での丁寧さが出るところです。

食べる場所としての空気

店内は落ち着いています。六本木という立地のわりに、気負いがない。

カウンターとテーブルが混在した構成で、一人でも入りやすい雰囲気です。接客は過不足がない。声が大きすぎず、動きが慌ただしくない。揚がりたてが揚がりたてのうちに届く。厨房とホールの連携が取れているときに起きることです。

キャベツの千切りは細く、水にさらしすぎていない。シャキシャキした歯触りが残っていて、とんかつを食べながらの箸休めとして機能していました。味噌汁はシンプルなもので、主役を邪魔しない選択です。

豚にまじめな店

豚組食堂という屋号が示すとおり、この店は豚肉にかなり意識的です。どの豚を使っているか、どう仕入れているか、という部分に力を入れている店は、メニューや店内のどこかにそれが滲み出る。豚組食堂もそういう店で、肉に対する姿勢がはっきりしています。

ヒレを塩で食べると、その姿勢が直接伝わってくる。余計なものをつけずに食べても成立するということは、素材に確信があるということです。とんかつという料理は工程が多い。下処理、衣のつけ方、油の温度、揚げる時間、休ませ方。どこかが崩れると全体に影響が出る。豚組食堂のヒレかつは、その工程が整っていました。特別なことが起きているわけではなく、やるべきことがやるべき順番でやられている。そういう仕事です。

食べ終えて皿が空になったとき、もう一枚頼もうかと少し迷いました。結局そうはしませんでしたが、その迷いが生じたこと自体が、この一枚の答えだったように思います。

店舗情報

豚組食堂

とんかつ

東京都港区日本、〒106-0032 東京都港区六本木6丁目4−1 ヒルズ メトロハット B2F

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