同業グルメ
銀座の隅っこで立ち飲む本気

銀座の隅っこで立ち飲む本気

オステリア ダ アダ

イタリアン
東京都中央区

銀座の路地裏で出会う、立ち飲みスタイルのイタリア式居酒屋。

コンセプト商品ホスピタリティ空間価格

inuro

ライター

器用貧乏家

inuro

銀座の立ち飲みイタリアン「オステリア ダ アダ」が示すもの

銀座に、立ち飲みのイタリアンがある。それも一等地に、だ。

エレベーターを降りると、そのまま店内だ。入口らしい入口もなく、気づけばもう店の中にいる。奥にシッティングスペースが設けられているものの、基本的なスタイルはスタンディング。隅に積まれた箱がそのままテーブルとして機能していて、店全体はとにかく狭い。それでいて、その窮屈さがむしろ雰囲気をつくっている。気取りがなく、ワイワイとした熱気があって、銀座という土地柄を意識させない空気感がある。

店内の賑わい

場所は中央区、銀座だ。賃料のことを考えれば、このコンセプトを選んだということ自体が、ひとつの判断だと言える。

大皿に並ぶ料理と、その単価

カウンターには大皿に盛られた料理が並んでいる。客はそれを見て注文するという形式で、いわゆる「選ぶ楽しさ」がそのまま視覚に訴えかけてくる仕組みだ。タパスバルやバルのスタイルに近いが、イタリアンという文脈でこれをやっている店は、銀座ではまず見かけない。

カウンターに並ぶ大皿料理

価格帯が際立っている。タコとじゃがいものサラダが360円、すだれ貝が380円。銀座という立地を考えれば、業界的にはかなり踏み込んだ価格設定だ。この単価でやっていくためには、回転数か客単価の積み上げか、あるいは仕入れの構造か、何かしらの答えを持っていなければ成立しない。その答えがどこにあるのかは外からは見えないが、少なくとも価格設定として機能していることは、店内の賑わいが証明している。

シンプルさとバリエーションの両立

料理の性格について言うと、一品一品はシンプルだ。複雑な工程を感じさせるものではなく、素材の扱いと味の方向性がはっきりしている。タコとじゃがいものサラダであれば、素材の質と火入れ、オイルや塩の加減といった基礎的な精度がそのまま出る料理だ。そこで成立しているということは、基礎がきちんと機能していると見ていい。

一方で、カウンターに並ぶ品数のバリエーションはかなり多彩だ。シンプルな一品を多数並べることで、客が複数の皿を試したくなる導線ができている。一品が低単価であることと、バリエーションが豊かであることが組み合わさると、客は自然と皿数を重ねる。客単価の設計として、理にかなった組み立て方だ。

立ち飲みという形式も、この設計と噛み合っている。着席して腰を落ち着けるよりも、立ったまま皿を足していく方が注文のハードルが下がる。気軽に試せる価格、気軽に追加できる形式、試したくなるバリエーション。それぞれがバラバラでなく、ひとつの流れとして機能している。どうなってんのこれという、の一言だ。

銀座という立地でこれをやる意味

業界的には、銀座で立ち飲みをやること自体がリスクに映る場合もある。客層が合わないのではないか、単価が取れないのではないか、そういう懸念は当然出てくる。

ただ、実際の店の様子を見ると、その懸念は外れている。銀座には高単価の店も多く、「もう一軒」「軽く食べたい」「ワインだけ飲みたい」という需要は確実に存在する。そこに、質があってかつ気取らない選択肢として入り込んでいる。ポジションとして、周囲の店と正面からぶつかっていない。

一等地で、あえて小さく、安く、シンプルにやること。それが差別化として機能しているという構造だ。立地の格を使わずに、むしろ立地の格から距離を置くことでキャラクターをつくっている。そういう見方もできる。

何が示唆として残るか

料理の技術的な水準として特筆すべきは、シンプルな皿が成立していることだ。大皿に盛って、カウンターに並べて、低単価で提供する。この形式においては、一品の完成度がそのまま剥き出しになる。飾りがない分、誤魔化しが利かない。タコとじゃがいもの360円が成立しているということは、素材と仕上げに一定以上の水準があるということだ。

仕組みの面では、大皿提供というスタイルが厨房オペレーションに与える影響も見ておく価値がある。アラカルトのオーダーに都度対応するよりも、ある程度まとめて仕込んで並べておくスタイルは、少人数でのオペレーションに向いている。銀座の狭い店舗で、あの賑わいをどう捌いているのかは、実際のキッチン周りを見てみないとわからない部分もあるが、少なくともフロアの混乱は見られなかった。

雰囲気づくりという点では、あの「重なった箱がテーブルになっている」感じは、計算された無造作さだと見ていい。きちんと整えた什器より、あの雑然とした感じの方がこのコンセプトに合っている。狭さをマイナスにせず、ワイガヤの密度として使っている。空間設計というよりも、空間の使い方の話だ。


総じて言えば、「オステリア ダ アダ」は、料理・価格・形式・空間・立地のそれぞれの要素がバラバラに機能しているのではなく、ひとつの方向性に向かって整合している店だ。銀座でこの価格帯、この形式、この雰囲気を成立させているというだけで、見ておく価値は十分にある。特に、低単価で成立させながら料理の質を担保するという課題は、多くの店が抱えているテーマでもある。その答えのひとつの形として、参照できる店だと思う。

店舗情報

オステリア ダ アダ

イタリアン

東京都中央区日本、〒104-0061 東京都中央区銀座6丁目4−3 4F

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