同業グルメ
誕生日じゃなくても、祝いたくなる一杯

誕生日じゃなくても、祝いたくなる一杯

오일제

韓国料理
ソウル特別市

注文後に一から仕込むわかめスープと精米したて米を提供する、素材の産地と調理工程にこだわり抜いたソウルの一軒。

コンセプト商品ホスピタリティ空間価格
本当は教えたくない
2025年7月25日訪問

阿部朋子

飲食支援
阿部朋子

ソウルで食べたわかめスープが、誕生日より特別だった

韓国でわかめスープといえば誕生日の朝に飲むもの、というイメージが染みついている。でもソウルで、わかめスープだけを真剣に出す店に入ったとき、そのイメージがそっと塗り替えられた。

席に座った瞬間から始まる仕事

店の名前は「오일제」(オイルジェ)。カウンター席に座ると、すぐに仕込みが始まった。スープを作り始め、白米を土鍋から丁寧に盛り付ける。その一連の動作を、15分ほどかけてただ私は眺めていた。厨房との距離がほぼない分、鍋の中の動きも、米の炊き上がりの湯気も、全部見えた。料理が運ばれてくる前からすでに、何かが始まっている感覚があった。

오일제の外観

待つことが苦にならない。それどころか、待つこと自体が食事の一部になっている。そういう設計をしている店は少ない。カウンター越しに作業を見せることで、お客の集中をそちらに向ける。結果として、料理への期待がきちんと積み上がった状態で器が届く。この構造は意図的なものだと感じた。

食べ方まで親切に日本語で用意されている

目の前に届いたわかめスープは、色が深かった。わかめはコムン島、日本語でいえば巨文島産の新芽わかめ。南海岸沖のその島は、わかめの産地として韓国でも知られている場所だ。新芽のわかめは柔らかく、繊維の主張が強すぎない。スープに溶け込むというより、スープと一緒にある、という感じがした。

白米は精米したてのコシヒカリ。韓国の店で日本の品種を使うという選択には、素材へのこだわりがはっきり出ている。炊きたてを土鍋から盛ってくれるので、粒の立ち方が違う。

わかめスープと白米、小鉢

店主から食べ方を教えてもらった。まずはご飯をタコの塩辛とからし菜キムチで食べる。半分になったらスープに入れる。そして醤油ソースにわかめをつけて食べると、また違う味になる、と。言われた通りに食べた。ちゃんと違った。塩辛の塩気と発酵の旨みで食べていた米が、途中からスープを吸って、別の食べ物になる。醤油ソースは、わかめ単体の味を引き上げるためにある。それぞれの要素に役割があって、食べる順番によって皿が変化する。一杯のわかめスープにそれだけのことが詰まっていた。

空間が料理を下支えしている

店内の居心地もよかった。落ち着いていて、余計なものがない。料理を待つ時間も、食べる時間も、自分のペースで過ごせる空気があった。ソウルの食堂は回転が速いところも多いが、ここはそういう雰囲気ではなかった。空間が料理の世界観と一致していた。

飲食の仕事をしていると、店に入ってすぐに「この店は何を大事にしているか」が見えることがある。ここは入ってすぐにわかった。素材、火入れ、所作、空間。どこかひとつが突出しているのではなく、全部が同じ方向を向いていた。

わかめスープというシンプルな料理をここまで緻密に組み立てられる、ということ。その事実が一番感動。ソウルに行ったら、必ず予約してもう一度行く。

店舗情報

오일제

韓国料理

ソウル特別市龍山区 漢江大路62ダキル 29

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