同業グルメ
冷麺で記憶を塗り替える店

冷麺で記憶を塗り替える店

中目黒焼肉 登牛門

焼肉・ホルモン
東京都目黒区

上質な内装と飲み放題コース込みの価格設定が両立した、中目黒地下の焼肉店。締めの胡麻冷麺も見逃せない一軒。

コンセプト商品ホスピタリティ空間価格
間違いない

宮﨑元成

飲食業界

株式会社pay it Forward

マグロと炉端成る代表取締役

中目黒の地下に降りていくと、少しだけ日常から切り離される感覚があります。街の賑わいをそのままに、一段階ざわめきが遠くなる。登牛門に初めて足を踏み入れたとき、まずそのことに気づきました。

地下の空間が持つ、独特の落ち着き

階段を降りた先に広がっていたのは、焼肉屋という言葉から咄嗟に思い描くものとは少し違う景色でした。照明は落ち着いていて、座席のしつらえにも手が抜かれていない。いわゆるラグジュアリーな内装です。それでいて価格設定は良心的で、飲み放題込みのコースも用意されている。

居酒屋を運営している立場からすると、この組み合わせは正直なところ嫉妬に近い感情を呼び起こします。空間にお金をかけながら料金を抑える。そのバランスを保つことがどれだけ難しいか、やっている者には分かります。どこかで折り合いをつけるしかない部分を、ここはうまく整えていました。飲み放題が付いていることで、お客様が「今日は使いすぎた」という後味を持たずに帰れる。そういう設計が、また来たいという気持ちに直結するのだと思います。

食べ飽きない、という確かな手応え

焼肉に来て、食べ飽きない。それを実感するまでには、正直少し時間がかかりました。最初の数皿は「きれいな肉だ」という以上の感想がなかったのです。ところが食べ進めるうちに、味の輪郭がそれぞれ違うことに気づき始めました。

一辺倒にならない、というのはつまりそういうことです。赤身の持つ骨格のある旨味、脂の甘さ、部位ごとに異なる火入れの余地、それぞれが別の顔を持っている。塩で食べるものとタレで食べるものの使い分けも明確で、皿が変わるたびに食べ方を変えたくなる。箸が止まらないというより、次に何が来るか気になって手を休める間がない、という感覚に近いです。

終盤になっても胃が「もういい」と言い出さない。それは量の話ではなく、構成の話だと思います。コース全体のなかで味の緩急がつくられていて、重さが一方向に蓄積しない。自分の店で組み立てるコース料理や飲み会のつまみの流れを考えるとき、この視点は常に意識しているつもりでしたが、ここでの食体験はその意識をもう一段引き上げてくれるものでした。

締めの冷麺が、すべてをひっくり返す

焼肉のあとに麺、という流れは珍しくありません。でも、「締めが死ぬほど旨い」という体験はそう多くない。登牛門の胡麻冷麺は、その数少ない例に入ります。

胡麻のペーストが麺にしっかり絡んでいて、濃厚なのにしつこくない。冷たさとコクが同居していて、焼肉で温まった身体にすっと入ってくる。お腹はすでにいっぱいのはずなのに、麺を引き上げる手が止まらない。それは意志の弱さではなく、バランスが計算されているからだと思います。塩気と甘み、温度と食感、その組み合わせが食べ続けさせる構造を持っていました。

締めの一品は、その店の全体の印象を最後に塗り替える力があります。どんなに中盤が良くても、締めが普通であれば記憶の中での評価はそこに落ち着いてしまう。逆に締めが際立っていると、全体がよかったという感覚を持ち帰れる。居酒屋としても、最後の一皿あるいは一杯にどれだけ気を配れているか、そのことを帰り道にずっと考えていました。

焼肉屋としての完成度の話を最後まで書いてきましたが、自分が突き詰めるべきことは焼肉でも冷麺でもありません。ただ、「また来たいと思わせる体験を最後まで保つ」という一点において、この店は確実に自分の店を上回っていた。それだけは、素直に認めておきたいと思います。

店舗情報

中目黒焼肉 登牛門

焼肉・ホルモン

東京都目黒区日本、〒153-0051 東京都目黒区上目黒1丁目23−1 中目黒アリーナ B1

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