同業グルメ
鶏一羽、ハサミの音、夢中の沈黙

鶏一羽、ハサミの音、夢中の沈黙

ソンガネタッカンマリ / 손가네닭한마리

韓国料理
ソウル特別市

鶏一羽を丸ごと煮込み、自家製ツケダレとニラ・水キムチで食べるソウル式タッカンマリの専門店。

コンセプト商品ホスピタリティ空間価格
間違いない

阿部朋子

飲食支援
阿部朋子

鶏が、ない。

正確に言うと、鶏がぐつぐつ煮えて、美味しそうに出来上がった写真がない。途中の記録が一切ない。食べることに完全に支配されていたから、という以外に説明のしようがない。

ソウルのソンガネタッカンマリでの話だ。

ハサミが入るまでの緊張感

タッカンマリとは鶏一羽という意味の料理だが、この日は二羽入っていた。正確にはタットゥマリと呼ぶべき量だった。サジャンニム(店主)が大きなハサミで豪快に鶏を切り分けていくのを、黙って見つめていた。その作業が終わるまでのあいだだけ、なぜか写真を撮っていた。それ以降の記憶は、箸と口とのあいだにしかない。

調理前の鶏二羽が鍋に入った状態

ツケダレが仕事をする

煮込みが進む間、テーブルでツケダレを自分で作る。辛子を溶かして整えていくのだが、これが全体の味の軸になる。鶏肉をタレに絡め、ニラと水キムチをそこに添えて一緒に口に運ぶ。水キムチの酸味と発酵の軽さが、鶏の脂と辛子の刺激をちょうどよく中和する。日本で食べてきた鶏料理とは、根本的に構造が違う食べ方だった。個々の素材が際立つのではなく、口の中で初めて完成する味だ。

ハサミで切り分けられた後の鶏が煮込まれている鍋

締めの麺で完結する

鍋のスープをそのまま使った締めの麺が、またボリュームある。鶏のうまみが溶け込んだ汁を最後まで使い切る設計になっている。食べ終わったとき、満腹という言葉しか出てこなかった。

ツケダレを自分で仕上げさせる仕組み、薬味の役割の与え方、そして鍋のスープを最後まで活かす一連の流れ。一羽の鶏をどこまで食べ尽くすかという問いに、この店はひとつの答えを持っている。

店舗情報

ソンガネタッカンマリ / 손가네닭한마리

韓国料理

ソウル特別市鐘路区 鐘路66ガキル 10

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