同業グルメ
 ソウルでタクシーが集まる店は、だいたいうまい

ソウルでタクシーが集まる店は、だいたいうまい

ヨンドンソルロンタン / 영동설렁탕

韓国料理
ソウル特別市

24時間営業でタクシー運転手に長年愛されてきた、ソルロンタン一本勝負の実力派食堂。

コンセプト商品ホスピタリティ空間価格

阿部朋子

飲食支援
阿部朋子

ソウルに来ると、どこかで一度はソルロンタンを食べる。それが長年の習慣になっている。牛骨を長時間煮込んで乳白色に仕上げたあのスープは、食べ慣れると他のもので代替が効かない。永東ソルロンタンに足を向けたのも、そういう流れの中でだった。

タクシー運転手が選ぶ店の条件

この店が「기사식당(キサシクタン)」として知られているという話を、訪問前に耳にしていた。キサシクタンとは、タクシー運転手たちが日常的に使う食堂のことで、安くて早くてうまい、という三条件を満たす店に自然に集まる評価だ。飾りがない。広告もない。それでも人が絶えない。

永東ソルロンタンはそういう店だ。24時間営業で、駐車場が広い。深夜でも食べられる。回転が速い。派手さとは無縁の内装でありながら、訪れるたびに誰かが食べている。この条件が揃っている店が長く続くのは、食べ手のほうが正直だからだと思う。

スープの純度と構造

メニューはソルロンタンだけだ。悩む必要がない。席に着いたらソルロンタンが来る、ただそれだけの話だ。

ソルロンタンとご飯、キムチが並ぶテーブル

器の中は白濁したスープ、そして混ぜると底から牛肉と素麺が姿を現す。肉は繊維に沿ってほぐれており、スープへの旨味の放出が長時間の加熱によってすでに完了している状態だ。スープだけ一口すすると、牛骨と肉の旨味が重なって出てくる。臭みがない。これが意外に重要で、牛骨スープは下処理と火入れの管理が甘いと獣臭が残る。ここのスープにそれがない。骨を下茹でし、丁寧に灰汁を取りながら煮込んでいる工程の精度が、スープの透明感に直結している。

混ぜると現れる牛肉と素麺

味付けは自分でやる。卓上の塩と胡椒でスープの塩分と輪郭を整えていく。この仕組みは、食べ手が自分の好みの濃度を決められるという意味で理にかなっている。薄めで飲み進めて後半に足す人もいれば、最初から塩を多く入れてご飯を投入する人もいる。永東ソルロンタンではその選択肢が全員に開かれている。

カクテキとキムチが担う役割

テーブルには大ぶりのカクテキと、ボリュームのあるキムチが置かれる。ネギは入れ放題だ。これらは付け合わせではなく、ソルロンタンという料理の構造を支える要素だと考えた方がいい。

牛骨スープは旨味の密度が高いが、酸味や辛味はほぼゼロだ。食べ進めるうちに舌が単調さを感じ始める。そこにカクテキの酸味と歯ごたえ、キムチの辛味と発酵の風味が入ることで、スープ本体に奥行きが生まれる。ネギはスープの温度と接触することで香りを立て、後味を引き締める。単純な組み合わせのようで、互いの不足を補う設計になっている。

値付けの判断基準

価格は手頃な水準に抑えられている。これだけの量のスープとご飯、惜しみなく出るカクテキとキムチとネギ、24時間の営業時間。それがこの価格に収まっているのは、内装や接客に余分なコストをかけていないからだ。椅子は機能的で、照明は明るく実用的で、食べ終わったら次の人が来る。華やかさにコストを使わず、出すものに集中する。タクシー運転手が何十年も選び続けてきた理由は、おそらくそこにある。

一度食べれば仕組みがわかる店だ。

店舗情報

ヨンドンソルロンタン / 영동설렁탕

韓国料理

ソウル特別市瑞草区 江南大路101アンキル 24

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